研修会・超音波からのメッセージ

●描出法とアーチファクトなど

癌がある可能性はあります。しかしその状況で癌を見つけるのは難しいので見つけられる限界もあります。

画像を見ないとお答えできません。

手術で肝臓が変形していると思います。状況により対処方法が異なるので簡単にはお答えできません。

●ポリープや結石など

2つまとめてお答えします。そもそも2mm程度のポリープは臨床的には経過観察を含めほぼ意味が無い所見です。また3mm未満のこのような所見は、ポリープとする確証(所見)がありません。たとえばスラッジのような結晶が壁に付着していることもありますが体位変換をしても確認することができません。ですからそもそもこの類いの所見をポリープと表現することに無理があるのです。・・・ではどうするか、これは所見の解釈の問題ですので、施設内で統一すれば良いことです。

可能性として考えられるのは多発コレステロールポリープ(コレステロージスといいます)か、過形成が考えられます。したがって「胆嚢壁の過形成を疑う」は妥当な報告です。ただし、過形成は将来胆嚢癌が発生してくることの多い変化ですので、現在は癌の所見ではなくても慎重な経過観察の継続か、胆嚢摘出手術をお勧めすべき所見のひとつです。

講義でもお話ししたようなアーチファクトを除く手技で見えなくなれば「アーチファクト」、あるいは体位変換や30回ジャンプで移動が確認できれば「胆砂」です。これら両者は見た目(所見)では判断できる根拠がないことがあります。要するに「胆砂」と記載するなら胆砂である診断根拠を示せないといけません。

スクリーニングの場合、時間の制約があるので、「できるところまで」観察して「描出不良」は免罪符(いいわけ)にはなりますが、はたしてそれが「できるところまで」かは、ご自身の意思で判断してください。

胆泥や結石は完全に動かして粘膜表面を露出できなくても、体位変換と多方向のアプローチで壁自体に10mm程度の病変があれば気づけることもあります。(隠されている程度によります)いずれにしても早期癌の発見が難しくなるのは、この条件の被検者(患者)の場合避けられません。したがってあまり「描出不良」であれば、胆嚢摘出術をお勧めする(D判定)根拠となります。

10mm以下のどの辺りの大きさかにもよりますが、造影CTも実施した上で超音波検査の経過観察(3ヶ月後)を併用すると良いでしょう。あるいは精査にするなら内視鏡超音波検査をお勧めします。

●壁肥厚や腺筋腫症など

2つまとめてお答えします。これは私の考えですが、壁の厚さを正確に計測することよりは、肥厚した病変の画像を複数枚記録することが大切です。まして、肥厚していない胆嚢壁を計測することはしません。

胆嚢壁肥厚には、ほぼ全体が肥厚する病変と、部分的に肥厚する病変があります。前者には急性胆嚢炎や全周性の腺筋腫症などがあります。この場合には計測はしますが厚さ(計測値)を精密に測ることに重要な意味はありません。一方後者は限局した隆起性病変を含みますので、病変のサイズとしてある程度正確に測る必要があります。とはいえ、その計測値が病変の評価に重要なわけではありません。

講義でもお話ししたように、胆嚢床では胆嚢壁とその措置側の肝臓との間に結合織が分厚く在るので、ここでの計測(評価)はお勧めしません。分厚くなっているここを避けて計測してください。

急性肝炎や悪性リンパ腫などの場合に見られるリンパ浮腫による肥厚、腹水に伴って現れる浮腫、肝硬変の患者に見られる低アルブミン血症による浮腫などがあります。

頸部の肥厚が目立つ腺筋腫症はあります。ただし正常の胆嚢でも頸部付近の粘膜が厚く見る時がありますので、RASやコメットがない場合には腺筋腫症かは分かりません。

胆嚢の体部に折れではなくくびれがある場合には、まず腺筋腫症(S型)を疑うのは構わないと思います。その部位を拡大してRASやコメットがあれば腺筋腫症と診断できます。

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